東急不動産 コーポレートコミュニケーション部
ブランドマネジメントグループ グループリーダー 眞明大介さん
(2024年3月取材、文中敬称略)
――PIVOTのタイアップ動画が公開されて3カ月ほど経ちました。反響はいかがでしょうか。
眞明 非常に好評をいただいています。
YouTube上ではすでに「10万回再生」(公開後3カ月経過時点)という数字が出ていますが、数字だけでなく「PIVOTで観ました」「興味を持ちました」といったポジティブな声を社内外で頻繁にいただけるので、「しっかり届けられているな」と実感しているところです。
――PIVOTへの出稿を決めたのは、どんなご期待によるものだったのでしょうか。
眞明 まず自分自身がPIVOTの視聴者で、おもしろいなと思っていました。創業者の佐々木紀彦さんとは彼の前職時代、2018年から面識があり、初対面の会話で「いいコンテンツを全力でつくらなければ届かない」と信念を熱く語っていたことが強烈に印象に残っています。 ですので、PIVOTファンとして、また個人的な信頼も含め、私が現職に就いた昨年4月にすぐに相談に伺ったという次第です。
企業にはお客様に向けてぜひ伝えたいと考える独自価値があります。現在の当社であれば、2030年までの長期ビジョンで掲げた「環境経営」というキーワードがそれです。
2022年12月時点時点でオフィスビルや商業施設など全244施設の再生可能エネルギーへの切り替えを達成し、TNFD (自然関連財務情報開示タスクフォース)レポートを開示するなど、国内不動産業界の先陣を切って、環境経営に取り組んできた実績には自信があります。しかしながら、その評価が広く認知・理解されているかというと十分ではなく、課題を抱えていました。
「環境といえば、東急不動産」と第一想起していただくにはどうすればよいか。二階堂ふみさんを起用して「環境経営」のイメージを表現認知に効くCMはすでに展開していましたが、“その先”の深い理解につながる新たな打ち手を探していました。
イメージの先の「より具体的に伝える」というステップとして、数十分間の尺を使ってしっかりと説明できる「番組」という形での発信は魅力的でした。ビジネス映像メディア分野において今最も勢いのあるPIVOTならば、きっと他にはないコンテンツを生み出せるだろうという期待がありました。
――大企業の広報手段は、テレビや新聞など従来型のマスメディアが“王道”だと言われてきました。新興メディア「PIVOT」での出稿を決めるにあたって社内をどのように説得したのでしょうか。
眞明 前提として、私たちが届けたい対象である「都心のビジネスパーソン」のライフスタイルに照らし合わせると、今はテレビよりYouTubeの相性がいいだろうという仮説がありました。ただ、「チャンネル登録数100万人のメディアなんです」と数字を述べたところで、それほど説得材料にはならないと感じていたのが正直なところです。より効いたのは、(サントリーホールディングス社長の)新浪剛史さんや(DeNA会長の)南場智子さんといった実業を動かすビッグネームが出演しているというファクトでした。
PIVOT側からの提案でありがたかったのは、番組の二次利用先としてタクシーADのメニューを柔軟に追加して対応してもらえた点です。タクシーの車内で流れる映像広告については、すでに昨年からCMとのセット施策として始めていたので、「次のタクシーADは、PIVOTの番組でいきましょう」とスムーズに社内提案できたんです。
ほかにも、自社メディアでも活用できる二次利用のメニューも多彩で、広告予算全体の中では非常にリーズナブルだという印象です。電通出身で企業の広告戦略にも精通しているCOOの木野下有市さんが、突破法を一緒に考えてくれたのは心強かったですね。
――実際に番組制作の過程に立ち会っていただき、どんな印象を持ちましたか。
眞明 初回の打ち合わせ段階から目から鱗でした。通常のコミュニケーション業務ではビジネスサイドとのやりとりが多く、クリエイターと直接話す機会は少ないのですが、PIVOTはテレビ出身のプロデューサーと直接やりとりさせていただき、「環境というワードを使っても観られない!もっと引きのある切り口にしましょう!」とズバズバと提案をしてくださいました。時に尖り過ぎたご提案もありましたが(笑)。
お互いに納得がいくまで議論をしながら、最終的には「渋谷の再開発」を入り口に、MCの国山ハセンさんがインフルエンサーと街めぐりをしながら当社の取り組みを発見し、識者の解説で「都市と環境」への理解を深めるという、ごく自然な流れの番組に仕上がっていきました。
収録当日はあいにくの荒天だったのですが、ハセンさんが見事なリアクションで進行して明るい雰囲気を保っていたのはさすがだなと感心しました。当社の入社1年目の社員も案内役として出演させていただきましたが、安心して堂々と話ができたようです。「若手も活躍できる企業」というイメージの普及にもつながったことはうれしいですね。
――これからの企業のブランディングにおいて、重要な視点はなんだと思いますか。そこにPIVOTが貢献できる価値があるとしたら、どんなことを期待しますか。
眞明 当社の環境経営が「事業機会の拡大」とそれによる将来の「収益化」にこだわる姿勢を表明しているように、イメージの向上にとどまらず、いかに新たな事業を呼び込めるか、ビジネスチャンスを広げられるかが重要だと思います。
「環境経営に強い東急不動産と組んで、こんな新しいビジネスを始めたい」と想起してくださるビジネスパートナーが増えれば、私たちの事業機会も拡大していきます。
そういった方々に具体的かつ前向きに想起してもらうために期待したのが、PIVOTの認知+理解をミックスしたコンテンツです。
一方で、企業広告を取り巻く状況を見渡してみると、「数字」の指標にこだわり過ぎて、新しいチャレンジの機会が失われてしまっているのは非常にもどかしいですね。「測れる指標」があることを優先して、コンテンツが疎かになるのでは本末転倒ですよね。もちろん数字も大事ですが、それはあくまで最終的な成果として表れるものであって、まずあるべきは「目的に沿った面白いものをとことんつくろう」というスタンスではないでしょうか。
実は、事業会社のブランディング担当者の間で「一緒にお金を出し合ってドラマでも作れたら面白いですね」といった会話も生まれ始めています。みんな、追うべきは「分かりやすい指標」ではなく「伝わるコンテンツ」であることに気づき始めているのではないでしょうか。
今後、コンテンツパワーをより正確に測れる“新しい指標”を生み出せたら、企業広告はもっと面白くなるはずです。PIVOTの皆さんとも引き続きチャレンジをしながら、企業広告の新たなスタンダードをつくっていきたいと思っています。